病院薬剤師は、臨床現場で患者さんの治療に直接関わることができる、やりがいのある仕事です。
しかし、実際に働き始めると、
・責任の重さによるプレッシャー
・責任の重さに比べて給料が低いこと
・夜勤やピッチ当番など働き方のつらさ
・医師や看護師との板挟みになりやすいこと
・薬局長や同僚との人間関係に悩むこと
など、理想と現実のギャップに苦しむ場面も少なくありません。
「患者さんのために頑張りたい」
そう思って病院へ就職したのに、「病院薬剤師なんて辞めたい」と感じてしまうこともあるでしょう。
この記事では、私自身の体験談を交えながら、病院薬剤師が辞めたいと感じる理由をお伝えします。
また、「辞めたい」と感じたときに後悔しないための考え方や、自分に合った働き方を見つけるポイントについても紹介します。
病院薬剤師を辞めるか迷っている方も、今の職場で働き続けたい方も、自分を大切にしながら薬剤師として働き続けるヒントになれば幸いです。
病院薬剤師を辞めたいと思うのはあなただけではありません
私自身、病院薬剤師として働く中で何度も「辞めたい」と思いました。
- ミスやインシデントを起こして落ち込んだ
- 医師に厳しく指摘された
- 看護師とのやり取りで悩んだ
- 薬局長や同僚との人間関係がつらかった
- 後輩指導に疲れてしまった
など、私と似たような経験をされた方もいるのではないでしょうか。
病院薬剤師を辞めたい7つの理由
病院薬剤師を辞めたいと思う理由は、人それぞれです。
ここでは、私自身の経験も踏まえて、多くの病院薬剤師が感じやすい7つの理由を紹介します。
夜勤やピッチ当番、4週6休など働き方がつらい
私は夜勤のない病院で働きましたが、ピッチ当番がありました。ピッチ当番の時はいつ電話があるかわからないため、夜も気がぬけず休んだ気になりませんでした。手当も1日1,000円ほどで少なかったため、当番になりたくないと思っていました。しかし当番は病院から近い距離に住んでいる人しかなれなかったため断りづらく、責任感から無理して当番をしていました。
4週6休は、「4週間(28日間)の中で何日休めるか」を決めた勤務制度です。つまり4週6休なら4週間の間に6日休みがあります。28日間で休みが6日、1週間平均では約1.5日休みです。
多くの病院では平日の勤務時間は7時間30分などと短いですが、土曜日にも仕事があるため、完全週休2日制の働き方と比べると出勤日数が多くなります。
ゆっくり休んだ気がしないと感じることがありました。また、疲れがたまっていくと思う人もいるかもしれません。
知識量が多く勉強が終わらない
学生時代、あんなに勉強したにも関わらず、働き始めてからも勉強は続きます。
仕事をしながら知らないことについて勉強し、さらに専門薬剤師や認定薬剤師の資格を取るために何年も勉強会に参加します。また、資格を取ってからも更新するために勉強し続ける必要があります。
また、新しい薬やガイドラインの改訂はどんどん行われて、全てについていくことは難しいです。
このように、終わらない勉強に疲れてしまうこともあります。
薬局内の人間関係がつらい
私が調剤薬局で働いていた時に、同僚薬剤師2人が全く会話をしない店舗を経験したことがあります。このような状況でも、調剤薬局では調剤・監査と役割がわかれていることが多く、コミュニケーションを取らなくても仕事を進めることができます。
しかし、病院では多職種や薬剤師同士で連携しながら仕事を進めるため、人間関係が仕事のしやすさに大きく影響します。
病院では個人というよりもチームとして働く機会が多いため、人間関係に悩まされるとより辛くなることがあります。
また薬局長の方針で業務の方向性が決まるため、薬局長とタイプが合わない場合は仕事を続けることが難しくなります。
医師や看護師との板挟みになりやすい
高圧的な医師や看護師から強い口調で責められたりすることがあります。
また、看護師からお願いされたことを医師に聞いてなぜか私が怒られてしまうなんてこともありました。
看護師の希望に寄り添いながら、医師の性格のタイプに合わせて問い合わせをすることもあり、間にはさまれて気を使って疲れることがあります。
責任は重いのに給料が安い
病院薬剤師は調剤薬局よりも給料が低くなることが多いです。
病院にもよりますが、特に研究機関でもある大学病院は病院の中でも給料が低いことが多いです。
大学院まで出て夜勤もしながら病院で働いても手取りが少ないという現実に、仕事へのモチベーションが下がってしまうこともあります。
精神的なプレッシャーが大きい
臨床に携われる分、重症患者さんや終末期の患者さんと関わる機会も多くなります。
薬剤師の提案が治療方針に影響することもあり、「本当にこの判断でよかったのだろうか」と悩むことも少なくありません。
インシデントが起きたときや患者さんの状態が悪化したときには、自分を責めてしまう方もいるでしょう。
そのため、責任の重さを感じる機会が多く、患者さんの状態が悪化すると精神的に落ち込むこともあります。
業務範囲が広く忙しい
病院薬剤師は調剤だけではありません。
病棟業務、DI業務、注射調剤、抗がん剤調製、無菌製剤調製、持参薬確認、TDM、委員会活動、カンファレンス、医薬品管理など、多くの業務を担当します。
病院によっては人員不足で一人ひとりの負担が大きくなり、「毎日時間に追われている」と感じることもあります。
患者さんとじっくり関わりたいと思って病院へ就職したものの、実際は目の前の業務をこなすだけで一日が終わってしまうことに、理想とのギャップを感じる方も少なくありません。
人間関係がつらくて病院薬剤師を辞めたい
病院薬剤師として働いていると、人間関係に悩むことがあります。
私は調剤薬局と病院の両方で働いた経験がありますが、正直に言うと人間関係の悩みはどの職場にもあります。
調剤薬局にも病院にも、高圧的な態度の人や感情的な人、人の悪口ばかり言う人がいました。
そのため、「転職すれば人間関係の悩みがなくなる」とは思っていません。
そこで、病院薬剤師ならではの人間関係について話していきます。
毎日同じメンバーと働くため距離が近い
病院では病棟業務やカンファレンス、医師や看護師との連携、薬剤師同士の情報共有など、一人で完結する仕事はほとんどありません。
そのため、相談しやすい職場であれば安心して働けますが、相性の合わない人がいると毎日のストレスも大きくなります。
一方で、このような「チームで働く」環境には大きなメリットもあります。
調剤薬局では、一人で判断しながら仕事を進める場面が多く、「この対応で本当に良かったのかな」と迷いながら働くことがありました。
病院では困ったときに先輩や同僚へ相談しやすく、薬局全体で声を掛け合いながら仕事を進めることができます。そのため、大きく方向性を間違えてしまう不安は少ないと感じています。
さらに、医師や看護師、リハビリスタッフなど多職種と関わりながら患者さんを支えるチーム医療を経験できることも、病院薬剤師ならではの魅力です。
そのため病院では人間関係の良さも悪さも働きやすさに大きく影響することがあります。医師や看護師との関係性によっては、必要以上に気を遣い、精神的に疲れてしまうこともあります。
上司との関係
薬剤部長の考え方によって働きやすさは大きく変わります。
教育に力を入れる病院もあれば、残業や勉強会への参加を当然と考える病院もあります。
また、相談しやすい上司かどうかで心理的安全性も大きく変わります。
私の体験談
私は上司からハラスメントを受けた経験があります。
なんとなく上司に対して違和感を感じていましたが、立場が上の人だったことから自分自身の感情にブレーキをかけてしまいました。
ハラスメントが問題となるきっかけになったのは、相談できる人が出来たことでした。
相談するのは誰でもいいです。
つらい状況の時にもらう客観的な意見というのは本当に助けになります。
相談できる人がいなければ、職場のハラスメント窓口に相談しましょう。
我慢し続ける必要はない
私自身、人間関係に悩んだ経験は何度もあります。しかし、その経験を通して感じたのは、「人間関係の悩みは転職だけでは解決しない」ということでした。
退職や異動があれば、一緒に働く人は変わります。どんなに働きやすい職場でも、ある日突然、気の合わない人と働くことになる可能性はあります。
こうした理由から、「人間関係が全く問題ない職場」を探すのではなく、困ったときに相談できる人がいるか、安心して働ける雰囲気があるかという視点で職場を見ることが大切だと思います。
人間関係は仕事の満足度を大きく左右します。しかし、それだけで職場を判断するのではなく、自分が無理なく働き続けられる環境かどうかを考えることが、長く働くためには何より大切だと私は感じています。
今の職場だけが病院薬剤師ではありません。まずはどんな求人があるのか見てみたい方は、紹介予定派遣も扱っているファルメイトで情報収集してみるのもおすすめです。
病院にも働きやすい職場はある
病院の種類によって、仕事の特徴や環境は大きく違ってきます。
ここでは高度急性期病院、急性期病院、回復期病院、慢性期・療養型病院、ケアミックス病院の種類や特徴をまとめています。
病院の種類と特徴、向いているのはこんな人
| 病院の種類 | 特徴 | 向いている人 |
| 高度急性期病院 | 救急や重症患者さんが多く、専門性の高い医療を学べる。業務量は多いが成長できる環境 | 専門性を高めたい人認定・専門薬剤師を目指したい人 |
| 急性期病院 | 手術や急性疾患の患者さんが多く、幅広い疾患や薬剤を経験できる | 幅広い知識や経験を積みながらスキルアップしたい人 |
| 回復期病院 | 急性期治療後の患者さんを支え、リハビリや退院支援に関わることが多い | 患者さんと長く関わり、ワークライフバランスも大切にしたい人 |
| 慢性期・療養型病院 | 長期療養の患者さんが多く、比較的落ち着いた環境で働ける | 落ち着いた環境で患者さんとじっくり向き合いたい人 |
| ケアミックス病院 | 急性期・回復期・慢性期など複数の病棟を持ち、幅広い経験を積める | 幅広い経験を積みながら、自分に合った働き方を見つけたい人 |
「現役病院薬剤師からひとこと」
私はこれまで、急性期病棟、地域包括ケア病棟、回復期病棟を持つケアミックス病院や整形外科が主な急性期病棟とリハビリテーション機能をもった病院で働いてきました。
実際に働いて感じたのは、病院によって働きやすさが違うだけでなく、同じ病院でも病棟や診療科によって仕事内容や忙しさは大きく異なるということです。
例えば、私が勤務していた病院では、急性期病棟でも内科と外科では特徴が異なりました。外科は手術が中心となるため、薬物治療が本格的に始まるのは術後になることが多く、一方で内科は入院直後から薬物療法が始まる患者さんが多いため、私自身は内科病棟の方が忙しいと感じていました。
また、地域包括ケア病棟では、患者さんが安心して自宅や施設へ退院できるよう、多職種と連携しながら退院支援に関わることができました。リハビリテーション病棟では長期間入院される患者さんが多く、一人ひとりとじっくり向き合えることにやりがいを感じました。
このように、病院の種類だけでなく、診療科や病棟によって求められる役割や働き方は大きく異なります。
「どの病院が一番良い」という正解はありません。
大切なのは、自分がどのような経験を積みたいのか、どのような働き方をしたいのかを考え、自分に合った職場を選ぶことです。
だから私は転職前に病院見学をおすすめしています。
病院薬剤師だからこそのメリット
病院薬剤師は給料が比較的低いため、「やりがいだけでは続けられない」と言われることもあります。
しかし、私はメリットもたくさんあると思っています。
17時台に終わる病院も多い
子育て世代は保育園などのお迎えがあるため、残業が出来ないなど働く時間に制限があります。病院は正社員でも17時台までのことがあるため、子育てと両立しやすいです。企業や薬局は基本が18時までなので、延長保育が必要になります。
私自身は子供への影響を考えると17時台までの勤務は働きやすさにつながると考えています。
私は出産後調剤薬局でパートとして働いていました。しかし、子供の体調不良で休むことがあると人数が少ないため同僚への影響が大きいことから、働き続けることが難しいと感じるようになりました。
病院へ転職すると、同僚が10人近くいたこともあり、薬局の時ほどには休みづらさを感じにくくなりました。
チーム医療に参加できる
医師や看護師はもちろんですが、リハビリやケアマネージャーなどの他職種と委員会や会議で意見を交わすこともあるため、日々様々な知識が身につきます。
専門知識が身につく
病院では医師や看護師などから質問されたりすることもあるため、勉強する機会が多くなり自然と専門知識が身につきます。
専門知識が身につくことから病院での経験は、薬剤師として働き続ける中で貴重なものになると思います。またたくさんの人に出会えることから自己成長につながると思います。
転職するなら失敗しないために確認したいこと
離職率を確認する
病院薬剤師にとって、薬局長の人柄や同僚の性格はチームとして働くため特に重要です。
良い上司によって、心理的安全性が確保されている職場なら離職率が高くないことが多いでしょう。
求人理由が人手不足なのか、業務拡大による増員なのか、前職者の退職理由や離職率などを確認し、長く働き続けられる職場なのかどうか見極めましょう。
職場見学で実際に働く人の話を聞く
病院は病院によって特徴が大きく違うため、必ず病院見学をしましょう。
病院見学をして忙しさやスキルアップできるか、自分にあった働き方が出来そうかなどを確認しましょう。またできれば転職先で実際に働いていた人に話が聞けるとよりいいです。知り合いに聞いて探してみましょう。もし、知り合いがいなさそうなら卸や製薬会社の人に聞いてみてもいいでしょう。
転職する前に集められる情報はできるだけ集めて、成功する転職にしましょう。
紹介予定派遣を利用するのもおすすめ
紹介予定派遣とは、一定期間派遣社員として実際に働き、その後お互いが合意すれば直接雇用へ切り替わる働き方です。
職場の雰囲気や人間関係を確認してから入職できるため、「転職で失敗したくない」という人に向いています。
転職するかどうかは、求人を見てから決めても遅くありません。
私自身も転職活動では、求人を見ることで「今の病院と比べる」という視点を持つことができました。
病院によって仕事内容や働き方は大きく違います。
また私は派遣薬剤師の方と一緒に働いたことがあります。その人はファルメイトから紹介されて病院へ派遣されてきました。
ファルメイトは様々な派遣の案件を紹介してくれるため、派遣や転職についての詳しい話を聞くことは転職活動にとても有利です。またファルメイトは面接にも同席してくれたりと手厚いサポートが受けられます。
まずは情報収集から始めてみましょう。
転職するかどうかは、実際に求人を見てから決めても遅くありません。
まとめ|「辞める」ことだけが正解ではありません
病院薬剤師として働いていると、「もう辞めたい」と感じる瞬間は誰にでもあります。
私自身も、人間関係や仕事のプレッシャーに悩み、何度も辞めたいと思いました。
しかし、実際に複数の病院で働いて感じたのは、「病院薬剤師」という仕事が合わないのではなく、「今の職場」が合っていない場合もあるということです。
病院の種類や診療科、薬剤部長の考え方、職場の雰囲気によって、働きやすさは大きく変わります。
だからこそ、勢いで退職を決めるのではなく、まずは他の病院にはどのような求人があるのかを知ることから始めてみてください。
転職するかどうかは、そのあとに決めても遅くありません。
私自身も、実際に求人を見たり、転職サービスに相談したりすることで、自分に合った働き方を考えられるようになりました。
今の職場だけが、あなたのすべてではありません。
せっかく取得した薬剤師という国家資格を、自分らしく長く活かせる働き方を見つけてください。











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