「真面目だよね」
「しっかりしてるね」
薬剤師として働いていると、そんな言葉をかけられることがあります。
でも、本当に真面目な人ほど、実は苦しくなりやすい仕事なのではないかと私は感じています。
ミスが許されない仕事。
患者さんのために自分が頑張らないといけない。
無理をしてでも、周りに迷惑をかけてはいけない。
そう思ってしまう真面目な人ほど、自分を追い込んでしまうからです。
この記事では、真面目な薬剤師ほど苦しくなってしまう理由と、私自身が感じてきたことを書いていきます。
真面目な薬剤師ほど「責任」を抱え込みやすい
ミスが許されない仕事だから常に緊張している
私たちの仕事はミスできない仕事です。
医療ミスをしてしまうと、患者さんの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
また患者さんとの信頼関係が崩れて、その後の治療継続が難しくなることもあります。
そうなってしまった時、薬剤師として感じる悲しみや虚しさ、無力感、悔しさは私たちが働き続けることへの意欲を削ります。
気を張り続け、間違えてはいけないプレッシャーを常に感じながら働くことは、健康に関わる仕事についている人にとって避けては通れません。ですが、その責任を真正面から受け止め過ぎてしまう真面目な人には、とても辛い仕事であると思います。
「もっと良い対応があったのでは」と考え続けてしまう
私たちの仕事の1つである服薬指導は、薬の飲み方や注意点を患者さんにわかりやすく伝え、安心安全に薬を飲んでもらうものです。しかし、理解力が高くない方、治療意欲が低い方、聴力が低い方など伝えることが難しいと感じることもあります。
誠心誠意を込めて説明したにも関わらず、後から思い返してしまいます。
「本当に理解できたかな」
「飲み間違っていないかな」
「違う説明の仕方があったかも」
家に帰ってからも反省会が続くこともあります。
また、私たちの仕事の1つである疑義照会は忙しい医師に連絡するため、とても気を使います。また回答を得たあとも、
「他にも良い提案ができたのではないか」
と、より良い対応を探し続けてしまいます。
寝る前に仕事のことを思い出して、
「あの対応はイマイチだったかもしれない」
「確認不足だったかもしれない」
不安になったり、仕事がまだ終わっていないような感覚になることもあります。
インシデントや小さなミスを長く引きずってしまう
薬剤師として働きだして20年近く経とうとしています。
幸いなことに大きな健康被害が出るような事故は経験しませんでした。
しかし、これまでインシデントが起きるたびに落ち込み、もう薬剤師を辞めた方がいいのではないかと思ってきました。
またインシデントにつながるおそれのあるヒヤリハットでも落ち込みます。
ヒヤリハットの例としては、お薬を薬袋に入れるときに違う薬を薬袋に入れてしまったことなどがあります。
それ自体は大きな間違いではありませんが、もしも1日1回飲む薬を3回飲んでしまったら…
想像するだけで恐ろしいですよね。
私たちの仕事は薬を袋に入れるという単純な作業でも緊張感を持ってしなければいけません。
休んでいても頭の中では仕事が終わらない
ミスをしない人間なんていません。
ですが、ミスが許されない仕事です。
そのためミスをした日は家に帰ってからも頭の中でその出来事がぐるぐるして心が休まらない状態になります。
また、寝る前に急に不安になることがあります。きちんと確認したとは思うけど、本当に合っているか確認したい気持ちにかられます。
「考えない」のではなく、「考える時間を決める」
帰宅後も仕事のことが頭の中から離れず、このまま仕事を続けるのが辛いと思ったことがあります。
また、無理に忘れようとしても余計に印象が強くなり忘れにくくなります。
そこで、私は1日の中で反省する時間を決めました。
お風呂の時間です。
子供と一緒に入っていてもぼーっと出来る大好きな時間です。
あえてリラックスできる環境で反省することで、必要以上に自分を責めずに済むようになりました。
長く働き続けるためには脳を休ませることも必要です。
反省する時はし、休む時は休むなど、メリハリのある薬剤師人生にしていきましょう。
患者さんのためと思うほど、自分を後回しにしてしまう
休憩時間を削って仕事をしてしまう
薬剤師なら休憩を中断された経験が誰しもあるのではないでしょうか。
私も同じく、患者さんが来たら真っ先に対応し、医師からの問い合わせはすぐに調べてお待たせしないようにしてきました。その影響で休憩時間が少なくなることも、ご飯を食べた気がしないこともありました。20代のときにはそれでも良かったけれど、年齢を重ねて子育てしながら働いていると、唯一のホッとできる時間が昼休みなんてこともありますよね。
そんな貴重な時間でさえ、仕事に追われて終わってしまうと、少しずつ疲れが溜まっていきます。
終わらない仕事と残業
薬局なら門前の病院の患者さんが帰るまで帰れませんし、病院だと緊急入院があると帰れなくなることがあります。患者さんが困らないように、薬の間違いがないようにしたいと責任感から仕事を受けて自分が苦しくなってしまいます。
また忙しい日には服薬指導の記録が書き終わらなくて残業することも。明日渡す薬ができてない、朝1番に退院する人の指導の準備ができていないなど、翌日の仕事の準備も終わらず、仕方なく残って働くことも。患者さんのために頑張りたいと思えること自体は、薬剤師として大切な姿勢だと思います。
だからこそ、真面目な人ほど無理を重ねてしまうのかもしれません。
体調が万全でなくても無理して出勤
私たちの仕事は、感染症が流行っている時期が最も忙しく、自分自身や同僚も体調を崩しやすいです。激務で体調を崩し病欠が出ると、残ったスタッフの負担がさらに増えるという悪循環になります。
インフルエンザやコロナにかかれば休まないといけませんが、私は扁桃炎になりやすく、子供の風邪からの扁桃炎というのがお決まりのパターンでした。夜は解熱剤でしのぎ翌日は何もなかったかのように出勤します。休めばいいじゃないかと思いますよね。私もそう思います。でも子供の発熱で使う有給は残しておきたい、有給以上に休んで欠勤になるのは社会人としてどうなのかと思い無理して働いていました。
感情をコントロールしながら働く感情労働の辛さ
感情労働とは、仕事の中で自分の感情をコントロールしながら、相手に安心感や満足感を与えるような表情や態度を求められる働き方です。もともとは社会学者の アーリー・ホックシールド が提唱した概念です。
薬剤師はどんな時でも冷静で患者さんに優しく丁寧であることが求められる仕事です。
極端かもしれませんが、患者さんに怒鳴られても怒鳴り返す薬剤師なんていません。怒っている相手に対して冷静に対応し、話を聞き、相手の不満点に共感や謝罪を示します。たとえ怒りが湧いてきても表には出しません。
この蓄積で見えない疲労が溜まっていきます。
医療職は「頑張る人」に負担が集まりやすい
気づける人の仕事が増える
インシデントを発見した人、問い合わせを受けた人、積極的に仕事をすればするほど自分の仕事が増えます。なので職場環境が悪い所では仕事の押し付け合いが発生します。
また人の命に関わる仕事だからこそ、仕事が出来ない人には重要な仕事を任せるのが難しく、仕事ができる人にどんどん仕事が集まり、できる人ばかり苦しくなるということが起こります。
断れない
本当は自分の仕事じゃないのに、
今から会議だから
今日人が少ないから
みんな仕事抱えてるから
色々な言い訳を使って仕事を押し付けられることがあります。一度や二度とならまだしも、何回も続くとなんで私がという気持ちが強くなり不満を抱えながら働くことになります。
真面目な人ほど疲弊
患者さんのために、病気を治すお手伝いがしたい、薬を飲み間違えないようにしてあげたいと相手のためを思っていると仕事に終わりがなくなります。
真面目で熱心な人ほど、
「じゃあお願いしてもいい?」
と頼られ、仕事が増えていくこともあります。
優しい人が損をする
体調が悪いから代わりに出勤してもらえないかと言われて、体調不良なら仕方ないかと了解し出勤しました。あとから実は二日酔いだったなんてこともありました。
同僚にモラルの低い方や仕事に対するやる気がない人がいると真面目な他の人に負担がかかります。
頑張る方向を変えてみよう
余裕を持つことを、学ぶ
全力を出して仕事をすると、不測の事態に対応しづらいです。それは患者さんにも不利益ですよね。なので8割くらいの力で仕事をすることを心がけています。残りの2割があることで余裕を持つことができ、ミスを起こしにくくなります。
優先順位をつける
毎朝今日はこれをすればオッケーと1つだけ目標を作りましょう。全て完璧には無理です。その1つを毎日達成することで、仕事に対する達成感を持つ事ができます。また優先順位をつけることで、何が大事なのか見える化できます。
自分がすることで、相手が成長する機会を奪っている可能性を考える
あなたの方が知識があるからとお医者さんからの問い合わせの対応を任されたとします。
頼られるのが嬉しいし、確かに自分の方が得意な分野なのかもしれません。
でも薬剤師としてそれでいいのでしょうか?
言うのは難しいかもしれませんが、まずは自分で調べてみてと言ってあげましょう。その方が将来また同じ質問をされた時、周りに相談できる人がいない時に役に立ち相手もためにもなるのではないでしょうか。
「向いていない」のではなく、頑張りすぎているだけかもしれない
真面目な薬剤師ほど
- 自分より職場の都合を優先してしまう
- 人手不足による事故まで自分の責任のように感じてしまう
- 患者さんを待たせることに強い罪悪感を抱いてしまう
そんな傾向があります。
個人の頑張り不足が原因でこれらのことが起こってしまう訳ではありません。人員不足や業務量の問題は、個人の努力だけでは解決できないこともあります。事故は環境やその他様々な原因から起こります。待たせないような仕組み作りを会社と現場で考えないといけません。
あなたが今この記事を読んでくれているという事は頑張りすぎているからかもしれません。
同僚や上司と問題を解決できないか話し合いましょう。もしも問題提起をしても何も行動しないような会社なら転職を検討する、より良い職場がないか探すという自分を守るための行動を一歩取ってみましょう。
まとめ
薬剤師は、人の命や生活に関わる責任の重い仕事です。
だからこそ、薬剤師という仕事にやりがいを感じる真面目な人ほど、自分を追い込みやすいのだと思います。
でも、本当に大切なのは、「壊れるまで頑張ること」ではなく、長く働き続けられることではないでしょうか。
私自身、働き方を変えながらここまで来ました。
今もし苦しいと感じているなら、「頑張り方」を変えてみてもいいのかもしれません。
あなたの薬剤師人生が、真面目さによって追い詰められるものではなく、
自分を守りながら、患者さんや周囲の力にもなる働き方につながっていくことを願っています。











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